• 10月 5, 2026

腰は曲げない、股関節で曲げる

―「床に手がつく」は、やめて―

「私こんなに体が柔らかいんです」

そう言って、立ったまま前屈して、床に手をつけて見せてくれる高齢の患者さんがいます。

「やめて!」 と思います。椎間板もせぼねも泣いとるよ。

腰そのものが大きく丸まっている。違うんです。大事なのは、

床に手がつくことではなく、腰をなるべく丸めずに、股関節から曲げられること

です。

腰を後ろに反らすと、後方には椎間関節がストッパーになります。なので、それほど反れません。

一方、前屈方向には、後屈時の椎間関節のような強い“骨のストッパー”がありません。。

そして、重力に任せていると、人間の背中はどうしても丸くなっていきます。

特に高齢になると、

– 背筋が弱くなる

– 股関節が硬くなる

– ハムストリングス(太ももの後ろの筋肉)も硬く、短くなる

– 骨盤をうまく前傾させにくくなる

といったことが重なり、股関節で曲げる代わりに、腰椎そのものを曲げてしまうようになります。

ここで問題になるのが、椎間板・終板(骨の端、椎間板と接しているところ)・椎体への負荷です。

腰を大きく丸めると、椎間板や椎体の前方には圧縮力がかかります。

さらに、その姿勢で重い物を持てばどうなるでしょうか。

「腰を丸めた状態で、さらに体重や荷物で押しつぶす」ということになります。

若い人ならそれでも耐えられることが多いでしょう。

しかし、骨粗鬆症がある高齢者では話が違います。圧迫骨折のリスクも増えます。

では、どうすればよいのでしょうか。

答えは単純です。前屈するときは腰ではなく、股関節で曲げる。

お尻を後ろに引くようにして、骨盤ごと前へ傾けます。

腰はできるだけまっすぐに保ちます。

このとき、太ももの裏、つまりハムストリングスが伸びます。

これが理想的な前屈です。床に手がつく必要はありません。

大事なのは、、「腰を丸めずにどこまで股関節で曲げられるか」です。

重い物を持つときも同じです。

腰を丸めて、そのまま持ち上げるのはよくありません。

膝を曲げて荷物に近づき、

腰はなるべく中間位のまま、股関節と膝を使って立ち上がる。

この方が腰椎にかかる負担を減らせます。

これは、「背中を反らせなさい」という意味ではありません。

後屈そのものが良いわけでもありません。

脊柱管狭窄症や椎間関節痛などでは、反りすぎると症状が悪くなることもあります。

大事なのは、腰を大きく丸めないこと。腰をまっすぐに固定して、股関節と膝を使うことです。

アフリカの女性が前かがみになっている写真を見ることがあります。

一見、ものすごく腰を曲げているように見えます。

でも、よく見ると、背中全体は意外なほどまっすぐです。

体幹をひとつの棒のように保ちながら、股関節から大きく前傾しています。

そこには、

ハムストリングスの柔らかさ

お尻や背筋の強さ

骨盤を動かす能力

が関係しているのだと思います。

前かがみになるときに、腰を曲げる必要はない。

少し言い切りすぎですが、患者さんにはこのくらい強く言った方が伝わると思う。

床に手がつくことを自慢するより、腰を丸めずに、股関節からきれいに前屈できること。

私はそちらの方を自慢してほしいと思います。そして、骨粗鬆症のある方には特に、

「腰を丸めて、重い物を持たない」、を覚えておいてほしいと思います。

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