- 6月 19, 2026
病気を治しているのか、生体反応を整えているのか
痛み、炎症と治療について、いつも考えています。患者さんには言います、
「ロキソニンも湿布も炎症を抑えているけど、炎症は抑えすぎたら病気は治らんの。
だから、ロキソ使えば治るわけじゃないし、血流悪なるし、使いすぎたらあかんよ」
(うーん、わかるかなあ?)
今日は痛み、炎症についてまとめてみます。

- 風邪薬は風邪のウイルスを直接退治しているわけではなく、熱を下げたり、咳を和らげたりしているだけです。では風邪を治しているのは誰でしょうか。そう、あなたの免疫です。
私たちは普段、「病気」と「症状」を同じもののように考えています。しかし実際には、
「病気そのものと症状、つまり病気に対する身体の反応は別のもの」です。
- 炎症はその代表例です。身体に傷ができると、赤くなる 熱を持つ 腫れる 痛くなる という反応が起こります。これは異常ではありません。白血球を集め、栄養を送り、組織を修復するために必要な反応です。つまり炎症は本来、身体を守るための仕組みです。ところが炎症が強すぎると話が変わります。腫れによって神経が圧迫され、痛みが増幅され、動きが悪くなる。そうなると今度は炎症そのものが問題になる。

- ロキソニンは、この過剰な炎症反応を抑えています。病気そのものを消しているわけではありません。炎症という生体反応を適切な範囲に調整しているのです。
- アイシングも似ています。大谷翔平選手が投球後に肩を冷やすのも、肩を「治す」ためというより、過剰な炎症や腫れを抑えるためです。修復反応は必要ですが、やりすぎると逆に障害になる。だから少し落ち着かせるのです。
- 湿布もそう。湿布がヘルニアを小さくしたり、軟骨を再生したりするわけではありません。炎症を抑えたり、それだけでなく、皮膚からの感覚入力によって痛みを和らげたりしています。つまり病変ではなく、生体反応や痛みの「感じ方」に働いているのです。冷たいのや温かいのがありますが、実際には低温でも高温でもありません。
- マッサージでヘルニアが押し戻されることはありません。しかし触れられることで痛みの回路が抑制され、筋肉の緊張が和らぎ、自律神経のバランスも変化します。結果として痛みが軽くなる。これも身体の反応を整えていると言えます。
- 漢方薬も面白い。葛根湯は風邪を直接攻撃する薬ではありません。2000年前に書かれた傷寒論では、汗が出ない、寒気がする、首がこわばるという病態そのものを「動かして」回復へ向かわせる薬として記載されています。
- 私が大好きな越婢加朮湯や防己黄耆湯も同じです。むくみや炎症、水分代謝の偏りを整えることで症状を改善します。現代医学的に見れば、免疫や自律神経、炎症反応や体液調節に作用しているのかもしれません。病気そのものというより、「生体反応の偏り」を整えている。

- 慢性疼痛もそう。慢性疼痛では、最初は組織の損傷や神経の炎症が原因だったとしても、時間が経つにつれて脳や神経系が痛みを学習します。火事は消えているのに、警報ベルだけが鳴り続けるような状態です。この段階になると、治療は単純に病変を治すだけでは足りません。
薬、運動、リハビリ、睡眠、マッサージ
説明、Shared Decision Making(共同意思決定)。
これらすべてが患者さんの「危険信号」を適切なレベルに戻すための治療になります。
そう考えると、医療は病気と戦うだけではなく、身体が持つ修復反応や防御反応、痛みや炎症といった生体反応を適切に整える営みでもあります。
病気そのものを治す治療、そして、生体反応を整える治療
実際は、その両方が大事!