• 8月 10, 2026

神経根ブロックについて②

痛みはゼロにはならんけど、原因も治療法もわかるから、生きていける

神経根ブロックにて症状が軽減し、痛みがゼロになったわけではないけれど、十分に生きていけるようになった2人をご紹介します。

神経根ブロックというと、「痛みを取る注射」と思われるかもしれません。

もちろん、それも大切です。

しかし、もう一つ、とても大切な意味があると思っています。

「この痛みは、原因がわかる。治療することができる。」と、患者が理解できること。

●80代女性

1か月前に左下肢背面痛が出現しました。

一旦は治まったものの、1週間前から今度は右下肢背面痛。

立つと痛いので、這って移動しているとのことでした。

レントゲンでは側弯はありますが、骨折はありません。

MRIを撮影すると、L5/S1に両側の椎間板ヘルニアがあり、外側陥凹もやや狭そうです。

ただ、画像だけを見ると、「これで這って移動するほど痛いのかな?」という印象でした。

内服で経過をみようとも考えました。

しかし、実際に這って移動するほどの疼痛です。

診断と治療を兼ねて、同日、右S1神経根ブロックを行いました。

すると、著効。「ああ、楽!」ニコニコして帰宅されました。

その後、1か月後にもう一度神経根ブロック。

ブロック前から、既に少し安心している感じ。そして、ブロックにてほぼ症状は改善し、現在4か月が経過しています。

この方のように、脊柱管狭窄症の症状が比較的短期間に急激に悪化したり、左から右へ症状が移ったりするのは、それほど典型的ではありません。

おそらく、もともとL5/S1にはある程度の狭窄があり、そこに椎間板全体の膨隆などが加わって、一時的に神経根の炎症が強くなったのではないかと考えています。

そして、罹病期間が短かったことも、ブロックがよく効いた理由の一つでしょう。

神経そのものが、まだそれほど傷んでいなかった。

だからこそ、神経を一度落ち着かせてあげることで、症状が改善したのだと思います。

●50代女性

こちらは少し違うケースです。

右腰痛が10年以上。

そこに1か月前から右下肢背面痛が加わりました。

立つ、しゃがむ、座る。どれもつらい。

人間ドックで「椎間板ヘルニアがある」と指摘されていました。(この結果に強くとらわれていた可能性もありますが)

MRIではL5/S1に椎間板ヘルニアがありますが、左右差はそれほどなく、神経根の圧迫も強くありません。

一方、診察すると右仙腸関節の圧痛が非常に強い。

そこで初診日は、とりあえずタリージェの内服で経過をみました。

2週間後。下肢痛はかなり改善しています。

ただ、右仙腸関節の痛みがはっきり残っていました。そこで仙腸関節ブロックを行いました。

その1週間後。「仙腸関節ブロックは、あまり効かなかった」ということでした。

そこで、思い切って右S1神経根ブロックを行いました。

すると、ブロック直後に初めて、はっきりとした除痛を認めました。スマイル。

さらに1週間後に受診されました。

「神経根ブロックの効果は、はっきりしていたのは半日くらいでした」とのこと。

ところが、「その後、薬を飲まなくても下肢が張らないんです」

つまり、あんまり痛くなくなった。

実はこの方、日帰りFESS手術を希望されていました。

しかし、この時点で手術の話はいったんストップです。

そして、この方の言葉がとても印象に残りました。

「症状も大分良くなりました。でも、それ以上に、日帰りで治してくれる病院が近くにあるということがわかったので、安心できました。希望が持てます」

神経を一度、休ませる。痛みの強い神経は、まるで罠にかかって傷つき、暴れ狂っているライオンのようです。痛い。しびれる。少し動かされるだけでも反応する。

この状態では、神経そのものが過敏になっています。

そこで局所麻酔で、一度神経を休ませる。いわば、麻酔銃でライオンを眠らせる。

そして、ライオンが眠っている間に、ステロイドによって炎症を抑える。

傷ついて腫れていた神経を、少しずつ落ち着かせていく。

そして、その後は身体自身の治癒力にバトンタッチします。その間に、身体が治していく

椎間板ヘルニアの場合、飛び出した椎間板がそのまま永久に残るとは限りません。

ヘルニアが体内に露出すると、そこに炎症反応が起こり、新生血管が入り、マクロファージなどの免疫細胞がヘルニア組織を処理していくことがあります。

(ヘルニアの自然吸収については、近いうちに、またまとめますね。)

つまり、ブロックをしている間に、身体自身もヘルニアを片付けている、ということです。

神経根ブロックが、ヘルニアそのものを消しているわけではありません。

しかし、痛みを抑え、炎症を鎮め、その間に身体自身が回復する時間をつくる。

これは非常に大切なことだと思います。

今回の2人に共通しているのは、ブロックで、すぐに痛みがゼロになったわけではないが、「この痛みには原因がある。そして、その原因に対して治療する方法がある」

と分かったことで、前向きになれた、という事です。

痛みが多少残っていても、「原因がわかっている、治療法がわかっている、悪くなったら、また治療できる」そう思えるだけで、人は普通に生活していけます。

神経根ブロックは、気持ちにも作用するんですね。

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