• 7月 5, 2026

「もう最後かもしれんから、何とか1回集まろう」 

―よっしゃ、何とか行かせてあげよ そんな思いのBKP-

比較的大きめの70代女性、みんな外来では痛そうだが、ひときわ痛そう。

「ありゃ腰だな。」

もともとの持病でステロイド内服が欠かせない。その為に糖尿病、骨粗鬆症にもなりました。喘息、狭心症があり、血液サラサラの抗凝固薬も飲んでいます。

元々の腰痛が10日前に悪化し、起き上がるのが激痛で受診されました。

きっかけのない腰痛で寝起きが痛い、下肢症状がない。

「失礼ですが、身体でかいですよねえ」

「半年でまた増えました。は、は、80㎏」(口ごもっても何でも、とにかく80㎏)

「急性腰痛が続いていますので、圧迫骨折を強く疑います。すぐにMRIまで撮ります、いいかい?」

「東京に行けるかいねえ、先生」

「ふつーに無理じゃない、なんで?」

「兄妹が集まるんだよ、もう最後じゃないかと思うんだ。88歳の兄さんと4人の妹。

私は一番下。1回集まりたいねって。20年ぶりなんだ。」

「チョチョチョ待って。とにかくMR撮ろう」(こういう話は非常にやばい、弱い)

結果:第4腰椎圧迫骨折

「はい、1週間後に手術しよ、東京はその5日後、うーん、行けるように頑張ろう。

手術までに痛みが少しでも良くなったら手術は中止、直前でも、いつでもね。

でも手術もできるように今日からすぐ術前検査始めよ」

私の気合にナースは少しあっけにとられている。

数日後には、その日に居なかったナースのつぶやき。

「えらい合併症持ってるな―。それで5日後に東京って、無理じゃねー?」

私は異常に耳がいいので、しっかり聞こえています。

さすが、チーフナースは全身状態をよく把握してくれている。そうなんです、危険はあります。それでも事前に総合病院内科の主治医にお伺いを立てて、何とかオペは可能そう。

実は確か1年くらい前か、自分の母親にも同じ事がありました。3姉妹で集まろうって。「最後かもしれないから」という言葉も聞いたような気がします。そして集まることができて、とても楽しかったようです。

そんな母上と患者さんが重なるところはありました。

もちろん基本的にいろんな判断はフェアーにしますが、なんとなく重なったのです。

手術直前の説明では「まだ痛いよ、手術お願いします」とのこと。

「やるか」

手術は自体はスーッと終わり、その日にCTも撮って、スーッと帰って行かれました。

とてもあっけなく。直後から幾分か楽になって。

何も連絡なく、という事はいいことですが、術後10日ほどたって抜針のために受診されました。

「行ってこれたよ、東京。楽しかった。集まれた、みんなで泣いた」

たまに、いやいつもですかねえ、こんな神様のご褒美を頂きました、というご報告。

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