- 6月 25, 2026
低侵襲とは結果である
6月18日、日本脊髄外科学会に参加し、「日帰り nerve root first FELF 104例の検討」を報告して参りました。
発表は、多分症例数が極端に多かったためか、会場全体としてはあまり実感を持って受け止められなかったのかもしれません。それでも座長の上田先生からはいくつか質問をいただき、有意義な発表となりました。
学会発表の日程は数か月前には決まります。開業医にとっては外来予約の調整も必要で、毎回なかなか大変です。今回はその準備はできていたのですが、発表直前になってパワーポイントを仕上げているときに、「あれ、その日、手術入っていなかったか?」と気付きました。
確認すると午後から1件、自分の担当手術が入っています。
もちろん学会発表も手術もキャンセルできません。
そこで大阪で発表を終えた後、急いで近江八幡へ戻り、そのまま手術へ。落ち着いていつも通り進め、16時30分頃には無事終了しました。
学会では多くの発表を聞く時間はありませんでしたが、先輩、後輩、友人たちと顔を合わせることができました。そして出張本屋さんで雑誌を約3万円分購入。
「これでしばらく勉強には困らないな」
そんな気持ちで帰ってきました。
脊椎脊髄ジャーナルは、整形外科、脳神経外科、放射線科、神経内科など、日本の脊椎診療のトップランナーたちが執筆する雑誌です。私は数ある書籍の中でも特に信頼しています。

学会から1週間。日常の外来と手術をこなしながら、
「さて、ジャーナルでも読むか」
と気楽にページをめくっていると、師匠の文章が目に入りました。
不思議なものです。
まだ読んでいないのに分かるのです。
文章の品格が違う。流れるように読みやすいのに、一つひとつの言葉に無駄がない。
そしてなぜか、読む前から姿勢が正される。むしろ少し謝りたくなるような気持ちになる。
私はわずか2年間ですが、この師匠の近くで学ぶ機会をいただきました。そのことを今でも誇りに思っています。
今回読んだ文章の中に、こんな一節がありました。
「しかるべきポイントを一つひとつ確実に押さえて術操作を進めていき、術操作が合併症なく終了した時点で、これは低侵襲であったと振り返ることができる。低侵襲手術とはこういったものではないでしょうか。私は低侵襲手術という言葉は好みませんし、患者に対する説明の際にもこの言葉を使用しません。『安全な手術を心がけます』と話します。」

内視鏡か顕微鏡か。
傷が何ミリか。
最新の器械を使っているか。
もちろんそれらも大切です。
しかし本当に重要なのは、患者さんが神経障害なく、安全に手術を終え、満足して帰宅できることです。
低侵襲とは術前に掲げる看板ではなく、術後に振り返って初めて評価される結果なのかもしれません。
学会では新しい技術を学びます。
私自身もFESSを中心に診療しています。
しかし、その技術を使うこと自体が目的になってはいけない。
目的は常に患者さんを安全に良くすること。
師匠の文章を読みながら、あらためてそう感じました。
今回のお言葉に恥じないよう、弟子の末席として、これからも修行を続けていきたいと思います。