- 8月 26, 2026
狭窄症やヘルニアは画像で治療方針は決まらんよ「違和感」
1.80代男性
診察室で真剣に画像を見入る。それはいいのだが、説明する前から、私の顔より画像ばっかり見ようとしている。この違和感は何だろう。

2年前に両下肢しびれを訴えて受診。MRIで2か所の狭窄を認めた。
その時は、何でもできるし、経過観察。
最近1㎞歩くと、不安定になる。両側下肢痛も悪化傾向、という事で受診。
仙骨ブロックは? とお聞きすると、これは拒否。特に深く理由は聞かず。
病気のある方だし、症状が進行しているからMRIを撮ろう、と単純に思いました。

MRIではL2/3、L3/4の2か所の狭窄を認め、L2/3の狭窄が微妙に進行して
いました。これをいざ、説明しようとしたところが冒頭です。
- 私:「少し上の狭窄が進行しています。症状も少し進行していますね。
狭窄症で、かなり手術したほうが良いのは、『足の動きが悪くなる、おしっこの調子がおかしくなる、そして5分も立てない、100mも歩けない』、だと私はいつも説明しています。あなたはブロックをしたくないみたいだし、当然、手術も希望していませんよね」
- 患者さん:「いや、画像が悪化してたら手術しようと思ってきました。手術するつもりはあります。」
- 私:「えー!」
2.20代男性
マッチョな感じの若者。さわやか。
数か月前にヘルニアの診断をしました。
「最近、痛みが悪化したので、来ました。」
MRIを強く希望していました。撮りますと、左のヘルニアがしっかりと拡大しています。
説明すると、笑顔で「わかりました、じゃあ湿布と痛み止め、また下さい」
なんか、爽やかだなあ、悪化しているのに? わかっている?
「なんか、やっているの?」
「はい、筋トレも、野球も、SUPも(キラキラキラ)」

(なんでMRI撮ったの? まあ、明るいからいいか、なじっても仕方がない)
「困っていないなら、当然手術はしませんが、スポーツを続けることで症状が悪化する可能性はあります。特に前屈や椎間板に負荷がかかる動作は注意してください。心配だねえ。」
結局、手術せず、スポーツを続けるという方針は変わらない。
では、今回のMRIは、治療方針を変えるために必要だったのだろうか?
画像で手術するかどうか決めようとしていた患者さん
画像は見たいけど、治療方針には関係ない患者さん
いずれにしても、脊椎疾患における画像検査の位置付けは重要!
「狭窄症やヘルニアは画像で治療方針は決まらない。症状、神経所見、生活への影響、患者さんの希望などを合わせて決める!」
癌とは違うんです。癌は画像がかなり治療方針決定に重要。

狭窄症で1㎞歩けても手術適応の人はいます。求めるレベルが高ければ、それに合わせて治療します。でも、画像が進行していたら手術する、というのは、私は「???」。
その患者さんは、そもそも、一緒に来た奥様を説得していなかったので、手術にはならずに、「二人で相談してください」、としました。
脊椎の病気って、単純に狭さ、圧迫程度ではないのです。
狭窄症なら、狭さだけで症状は決まりません。脊椎が不安定になっているのか、それとも変性が進んでむしろ安定してきているのか。そうしたことも症状に関係します。画像上は狭窄が進んでいても、症状が変わらなかったり、むしろ改善したりすることもあります。
だから、MRIは重要だけれども、それだけで方針が決まるわけではないのです。
症状、神経の状態、生活への影響、そして患者さんが何を望んでいるかを合わせて決めるんです。
これを説明してからMRIを撮ればいいけど、「MRI撮ってもらうぞー」という気分で来られた患者さんに、この説明はなかなか頭に入りません。
MRI撮った後で、患者さんの反応を見て、私が「残念」と思う事が多いのです。
説明していないので、仕方がない。
今日はそれをゆっくりと、この場で説明しようと思ってのコラムです。
では
「画像で治療方針がかなり決まる病気」の代表
① 癌
② 脳出血
③ 急性期脳梗塞
④ 骨折・脱臼
⑤ 急性硬膜外血腫
⑥ 大動脈解離・肺塞栓など
画像所見そのものが、病気の重症度や緊急性、治療方法を決める重要な情報になる病気ですね。
それでは逆に
「画像で治療方針が決まらない病気」の代表。

この表で気付くのは、当院で扱う病気が非常に多い、という事。
MRIがあって、これだけこういう病気を扱っていれば、そして、ちゃんと説明してからMRIを撮るようにしなければ、今回のようなジレンマは当然ですね。
画像で決まらないとは言っても、はじめに診断するためには画像が必要です。
はじめに診断ができていれば、その後、画像の変化で治療方針を決める、という事は通常ありません。膝だって、腰だって、患者さんが困っていなければ、それでいいんです。
もちろん、違う症状が出て、違う病気が発生していると考えられれば、状況は違います。MRIも必要でしょう。狭窄症の人に圧迫骨折は、もちろんあり得ます。
「MRIが悪くなったから手術する」ではなく、「何を困っているのか」が大事なの。
主役は、画像ではなく患者さん。