• 6月 12, 2026

脊椎疾患と片頭痛は似ている?

Shared Decision Making(SDM:共同意思決定)

脊椎疾患と片頭痛は、一見するとまったく違う病気のように見えます。しかし、この二つには大きな共通点があります。

それは、

「治療方針に絶対の正解がない」

ということです。


昔の医療:IC(説明と同意)

従来の医療では、

医師「手術が必要です」

患者さん「お願いします」

という形が一般的でした。

これはパターナリズム(父権主義)と呼ばれる考え方で、治療方針の決定は主に医師が担っていました。

医師が十分な説明を行い、患者さんが同意する。

これが

Informed Consent(IC:説明と同意)

です。

例えば、脳や心臓の血管が詰まりかけていて、放置すると命に関わる可能性が高い場合、多くの人は積極的な治療を希望します。

このように、選択肢が限られ、医学的に推奨される方向性が比較的明確な状況では、ICが中心となります。


最近の医療:SDM(共同意思決定)

一方、近年重視されているのが

Shared Decision Making(SDM:共同意思決定)

という考え方です。

特に脊椎疾患や片頭痛の診療では、このSDMが重要になります。

例えば、

・脊椎疾患では、手術を選択することもできるし、保存療法を続けることもできる

・片頭痛では、発作時の治療のみで様子を見ることもできるし、毎月費用をかけて予防治療を行うこともできる

このように複数の選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

脳梗塞や心筋梗塞のように治療方針がほぼ決まっている病気ではICが中心になりますが、脊椎疾患や片頭痛のように患者さんごとに最適解が異なる病気ではSDMが重要になります。

SDMとは、医学的根拠(エビデンス)に、患者さん自身の価値観や人生観を組み合わせて、一緒に治療方針を決めていく方法です。

医学的な判断や情報提供は医師の役割であり、患者さんはご自身の価値観や生活背景を踏まえて選択に参加する。

その対話を通じて、最も納得できる治療方針を一緒に考えていくのがSDMです。


私自身の学び

私は日常診療の中で、自然とSDMに近いことを実践していたと思います。しかし、この概念を強く意識したことはありませんでした。

今回、エムガルディを販売するリリー社のご縁で、キジマあたまのクリニック院長・木嶋保先生の講演のお手伝いをさせていただく機会があり、初めて体系的に学ぶことができました。

木嶋先生の講演では、ICとSDMの違いが非常に分かりやすく整理されていました。

IC(説明と同意)は、医学的な確からしさが高い内容については非常に有効な考え方です。

一方、選択肢が複数あり、何を優先するかが患者さんによって異なる場合には、SDM(共同意思決定)が重要になります。

つまり、

① 検査結果や医学的エビデンス

② 医師の知識・経験・意見

③ 患者さん一人ひとりの価値観や人生観

これらを合わせて、「共同で」治療方針を考えていくのです。

単純に言えば、ICよりも時間がかかります。

だからこそ、これまで以上に医師も気合いを入れて患者さんと向き合い、そして看護師さんの力も借りながら診療を行っていきたいと思います。


講演会後には、淡海せぼねクリニックの「頭痛マエストロ」鈴木元先生とも食事をご一緒させていただきました。

鈴木先生は、まだ多くの医師が頭痛診療に注目していなかった時代から、日本の頭痛診療の第一人者である立岡良久先生に師事し、長年にわたり頭痛医療に取り組んでこられました。

その歩みに深い敬意を感じます。

病気や状況によって、ICが中心となる場合もあれば、SDMが重要になる場合もあります。

これからも、その違いを意識しながら患者さんと向き合っていきたいと思います。

脊椎疾患も片頭痛も、「正しい治療を選ぶ病気」というより、「自分に合った治療を選ぶ病気」なのかもしれません。

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