- 7月 24, 2026
頚の脊髄の入れ物が元々狭い人と広い人がいるという事
「元々、脊柱管が広ければ、大きなヘルニアが出てきても何ともないけど、狭い人に、ヘルニアが出たり、骨棘ができたり、黄色靱帯が分厚くなったりしたら、そりゃあ、脊髄は傷むよ。」
「脊柱管の広さは身長と一緒。20歳では必ず決まっていて、以後広がりません。
という事は、将来脊髄症を発症しやすいか否かは、20歳である程度決まっています。」
これは外来でしょっちゅう、昔からしている話。
であればどのくらいが普通で、どのくらいが狭いのか。
日本人の頚の脊柱管の平均は男で15mm、女で14mm。
そして<12mmは発育性脊柱管狭窄と呼ばれることが多いです。発育性脊柱管狭窄に年齢とともに、椎間板膨隆 骨棘形成 黄色靱帯肥厚 が加わると、脊柱管はさらに狭くなります。つまり、頚椎疾患を発症しやすい。

正常の頚椎では、頚の脊髄の周囲に十分な余裕があります。多少、上を見ても、脊髄は圧迫されません。
しかし、発育性頚部脊柱管狭窄では、脊髄の後ろに逃げ場がほとんどありません。
そこへ、
上を向く 洗髪する 電球を交換する 軽くつまずく 手術中の体位変換
この程度の動きが加わるだけで、後方からは黄色靱帯がたわみ、前方からは椎間板や骨棘が近づき、脊髄は前後から挟まれるようになります。

広いエレベーター(脊柱管)の中では、コントラバス持っても(大きなヘルニアや靱帯骨化があっても)余裕。多少揺れたりしても。
狭いエレベーターの中でバイオリン(小さなヘルニアや骨棘、など)持っていたら、揺れた時(後屈したり、転倒したら)、だれかケガします。

実際に経験した症例です。

3か月ごとに大学の神経内科に歩けなくなってステロイドパルス入院する男性。外傷はありません。普通に暮らしているだけで歩けなくなるのです。
MRIでは脊髄内に損傷はあるが、正中位MRIでは圧迫されているように見えない。神経内科の先生に相談されました。
私は後屈したときに脊髄が後方から圧迫される様子が予想されました。脊髄造影という検査でいつも前屈、後屈写真を撮影していたから。
MRIでやってみると見事に脊髄の高度圧迫所見が再現されました。これにより、除圧の適応を神経内科教授も納得して、手術になりました。もう、3か月ごとのステロイド加療は必要ありません。
上記のようなことに興味を持っている医師は正直多くないです。大学ではしばらくこの話ばかりしていました。
患者さんで、もし自分が頚椎レントゲンを撮影された際に、「前後径は?」「脊柱管狭窄ありますか?」なんて質問すると、Drに驚かれるか、または理解されないか、どちらかです。
とても大事な事項なので、今日は少し詳しめに書きました。