• 7月 15, 2026

風ではなく、志で歩く

誰かが私の悪口を言う。

そんなことは、珍しいことではありません。

むしろ、仕事を続け、多くの患者さんと向き合えば向き合うほど、その機会は増えていくのでしょう。

もちろん、耳を傾けるべき意見はあります。

繰り返し指摘されることは改善する。

患者さんにとってより良い医療になるなら、素直に変わればいい。

一方で、それが誰か一人の主観や、その時の感情だけであれば、そこまで抱え込む必要はありません。


反対に、誰かが私を褒めてくれることもあります。

もちろん嬉しい。

でも、それで浮かれてしまえば、結局は悪口に傷つくことと同じです。

褒め言葉にも、悪口にも、自分の歩く速さを決められていることになります。

追い風に乗れば速く歩き、向かい風では立ち止まる。

それでは、自分の人生の主導権を風に渡しているようなものです。


私は、自分の周りに透明なトンネルがあることを想像します。

外では、強い向かい風が吹くこともあります。

背中を押してくれる追い風の日もあります。

でも、その中だけは風が吹きません。

静かで、自分だけのサンクチュアリです。

私はその中を、いつも同じ歩幅で歩いていきます。

わざわざ外へ出て向かい風を浴びる必要もありません。

追い風を探し回る必要もありません。

どちらも、自分の歩幅を乱すだけだからです。


では、そのトンネルはどこへ向かっているのでしょう。

私が思い浮かべるのは、吉田松陰の「志」です。

もちろん、私が松陰のような人物だとは思いません。

けれど、彼が日本という集団の未来を信じ、そのために自分の能力を使い切ろうとした姿勢には、今でも心を動かされます。

志とは、地位でも、お金でも、評判でもありません。

自分は何のために歩いているのか。

それを忘れないことだと思います。


私にも、小さな志があります。

手術を通して、人の苦しみを少しでも減らしたい。

より安全に、より負担の少ない治療を洗練し、次の世代へ残したい。

そして、自分一人ではなく、医療という集団の役に立ちたい。

ありがたいことに、私は手術をする能力を与えていただきました。

その能力を、自分のためではなく、人のために使い切る。

それが、私の歩く方向です。

だから今日も、追い風にも向かい風にも流されることなく、自分の歩幅で前へ進んでいこうと思います。

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