当クリニックで扱う主なせぼね疾患

  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 腰椎椎間孔狭窄症
  • 腰椎すべり症・分離症・分離すべり症
  • 圧迫骨折
  • 頚椎症性脊髄症・後縦靭帯骨化症
  • 頚椎症性神経根症
  • 胸椎黄色靭帯骨化症 など

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア (図A・B)

腰椎椎間板ヘルニアは、片側または両側のでん部痛・下肢痛・腰痛をきたす場合が多く、痛みで座っていられないことが多いです。若年層では単純なヘルニア(図A)が多いです。これに対し、高齢層では脊柱管狭窄を伴うこと(図B)が多いです。

痛みに関していうと、「ヘルニアの大きさ」よりも「神経(根)がどれだけ圧迫されているか」が重要です。例えば、アスリートのように椎間関節の肥厚が強い場合は小さなヘルニアでも激痛になります。

治療においては、まず「急いで手術しなければいけないケース」があります。具体的には、筋力低下(とくに足首や母趾)や排尿障害をきたしている場合、激痛で日常生活に支障をきたす場合です。当院ではすべてFESS法で治療可能です。このように、急いで手術するケースもあるのですが、基本的には3か月間は保存的治療を行います。ただし、3か月たったら治るとは限りません。治らなければ手術することが多いです。

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症 (参照図A・B・C)

正常な状態ならば、馬尾神経の周囲には十分な髄液の空間があります(図A)。腰部脊柱管狭窄症になると、この空間が狭くなってしまいます。そのため、座位では楽でも、立位や歩行では腰痛や下肢しびれをきたすことが多いです(間欠性跛行)。さらに進行すると座位や仰向けでも症状を出します。排尿障害の原因になっていることも多いです。

なお、片側性の症状であれば、外側陥凹(図B)における神経根・馬尾神経の絞扼が原因です。中心性狭窄といって全周性に馬尾神経が絞扼されている場合(図C)は、両下肢症状を示すことが多く、最も狭窄の進んだ形といえるでしょう。保存的加療が無効で、筋力低下や排尿障害があり、立位や歩行100m以下、立位5分以下で症状をきたす場合は手術を考えたほうが良いと思われます。

神経が変性してしまうと手術をしても十分に改善しません。ヘルニアと同様、手術はすべてFESS法が可能です。つまり局所(硬膜外)麻酔、日帰り、そして保険です。腰部脊柱管狭窄が複数か所ある場合には、まず1か所を選択して手術を行い、十分な改善がなければ2か所目を別の日に行います。多くの患者様は1か所目の手術のあと、2回目の手術は行わずに済みます。

腰椎椎間孔狭窄症

腰椎椎間孔狭窄症 (図A・B・C・D・E・F)

腰椎模型を後方から見ると右の椎間孔はふさがっていません(図A)。これに対し、斜め、横から見ると神経根も見えます(図B・C)。椎間孔狭窄とは、骨(図D)や靭帯、椎間板の問題で狭くなり、神経根が絞扼された状態(図F)を言います。この病態は、腰椎多数回手術例(Failed Back Surgery Syndrome; FBSS)、つまり手術してもよくならずに何回も手術を受けなければいけない原因の中で最大のものと言われています。図Eのように、脊柱管は広がっているのによくならない人は、図Fの部分に狭窄が残っていることが多いのです。

腰椎椎間孔狭窄症の手術方法は、一般的にはチタン製金属固定具を使用した腰椎椎体間固定術が行われることが多いです。なぜなら椎間関節を破壊せずに狭窄した椎間孔を拡大することは簡単ではないからです。そしてこの病変は「低侵襲せぼね治療」、すなわちFESSの手術の真骨頂なのです。

腰椎すべり症・分離症・分離すべり症

椎間孔狭窄症と同様に古い分類では脊柱管狭窄症の中に入ります。すべり症では初期の不安定期には腰痛が中心ですが、進行すると上記のように脊柱管狭窄・椎間孔狭窄による神経症状、つまり殿部・下肢痛、時には神経根性の腰痛をきたします。不安定性による腰痛中心の患者様は固定術をできる病院をご紹介します。しかし、かなりの患者様は低侵襲せぼね手術で治療できることが海外の報告でも経験的にもわかってきています。

そのため、当クリニックではあえてすべりは治さずに脊柱管狭窄症・椎間孔狭窄症としてFESS法によって治療し、良好な成績を得ています。腰痛があっても、それが不安定性由来か、神経根性のものか、つまり固定術が必要か除圧術のみで改善するのかは脊椎外科医にとって大きなテーマです。当クリニックのホームページのみで簡単に説明することが難しいため、ぜひとも当クリニックを受診し、直接ご相談ください。

圧迫骨折

圧迫骨折 (図A・B・C・D・E・F)

骨粗しょう性椎体圧迫骨折は、くしゃみのみでも発症しますし、意識しないような軽い外傷でも発症します。診断はレントゲンのみではわからないことあります(図A)。その場合は、MRIがとても有効です。 CTでも不十分なケースがみられます(図B)。MRI(T2)は狭窄やヘルニアの診断では最も威力を発揮する撮影法ですが、新鮮な骨折の診断には適しません(図C)。 MRI(T1)のほうがむしろ「むくんだ」感じはわかります(図D)。MRI(脂肪抑制)ですと、よくわかります(図E)。

なお、せぼねの不安定性がなくなれば疼痛自体もなくなります(図F)。コルセットのみで治癒(骨癒合)すれば局所の痛みは取れますが、これが遷延するとせぼね自体、またはその尾側の背部や腸骨が痛むことがあります。寝返りでも痛みます。治療は金属固定が行われる場合もありますが、当クリニックでは日帰りが可能なBKP法を行っています。

頚椎症性脊髄症・後縦靭帯骨化症

頚椎症性脊髄症・後縦靭帯骨化症 (図A)

頚部で脊髄が椎間板ヘルニアや骨棘、骨化した靭帯により圧迫され、神経症状をきたすことです。両手が不器用になる、足がもつれる、バランスが取れなくなる、失禁や頻尿などの排尿症状がかなり進行した症状となります。当クリニック院長が発表した2016年の論文(図A)でお示ししたように、頚椎症は体幹の帯状痛、顔面の痛みやしびれなど様々な感覚症状をきたすのです。

頚椎症性脊髄症・後縦靭帯骨化症 (図B・C・D)

MRIでも前後屈しながら撮影することで初めて診断されることもあります(MRI正中位(図B)、前屈位(図C)、後屈位(図D))。

手術に関していうと、一般的には侵襲的な頚椎前方固定術や大きな皮膚切開の椎弓形成術が選択されます。当クリニックでは神経所見と画像所見から1椎間、または2椎間の除圧で改善すると考えらえた症例のみFESS法で手術を行っております。

頚椎症性神経根症

頚椎症性神経根症 (図A・B・C・D)

頚椎症性神経根症は、頚部で神経根が椎間板ヘルニアや骨棘、上関節突起により圧迫され、神経症状をきたすことです。頚肩の痛みと上肢の痛みやしびれが特徴です。前胸部痛も多いです。頚を後屈すると痛みが走ることがあります。低い枕で寝るのがかなり苦痛であり、座る、またはうつぶせで寝る人もいます。神経根の圧迫・絞扼が原因(図A・B)ですので、この部分の骨削除を行い、開放します(図C・D)。FESS法が行われます。全身麻酔を要しますが、日帰り手術が可能です。

胸椎黄色靭帯骨化症

頚椎症性脊髄症と類似の症状ですが、上肢症状はありません。下肢筋力低下や排尿障害・両下肢の感覚障害を来します。難病ではありますが、FESS法の適応です。