- 9月 11, 2026
事故、労災と補償
当院では交通事故後の患者さんも診させていただいています。接骨院から紹介で来られて、検査や内服、外用、時にブロック治療を当院で行い、事故後の施術を接骨院で行われる患者さんも多いです。
症状固定になると、治療による医学的な改善を目指す段階から、残った症状をどう評価し、補償につなげるかという段階に移ります。
「症状固定」と医師が言わないのに、保険会社が自賠の支払いを独自に打ち切ることもあります。それに対して、医師が保険会社に対して支払いを続けるよう指示する立場ではありません。基本的には、保険会社と患者さんとの間の話になります。

では医師が行う症状固定とは
国土交通省の自賠責の定義、厚労省の労災でもほぼ同じ
「症状が安定しており、現在行っている医学上一般に認められた治療を継続しても、今後、有意な症状改善が期待できない」
です。症状固定日は医師が判断します。
「有意な症状改善が期待できない」ということですから、症状が残っていること自体は、症状固定を否定する理由にはなりません。
症状固定後に後遺症認定や慰謝料の設定などが行われる場合があります。
では、症状(自覚症状がほとんど)が遺残したときに、それが事故由来かどうかを判断する基準は、どうなっているのでしょう。
「事故の前になかった症状が事故後にある、だから事故のせいだ」と考えるのは、論理的には自然と思います。

おそらく事故にあわなければ、元と同じ生活、(無)症状で生きて行けたと仮定されるから。この論理で、事故が悪い、全て事故のせいだ、と判断する世界もあるかもしれませんが、現在の日本はそうではないのが現実です。

「事故が原因だ、というには医学的な検討が必要」とあるでしょ。
では医学的に、事故が原因だ、と言われることが多いのは、

骨折、脱臼、脊髄内に損傷がある、血腫がある、そして外傷性ヘルニア
骨折から血腫までは常識的にわかります。外傷性ヘルニアだけは少し応用問題です。

事故前後の画像比較、は必要条件かもしれませんが、それほど重要でない。事故前にMR撮っている人なんかほとんどいないし。
事故後のMRIで信号変化、軟部組織損傷、椎間板の云々書いてありますが、実際には通常のヘルニア以外に、これは外傷やろーという出血や骨折、靭帯が切れている、などの所見があって、ヘルニアもある、というときは外傷性と認められることもある、という事。そういう時はMRI以外にも臨床所見が強くて、あまり迷う事がありません。科学的でも、医学的でもない話をさせていただければ、私の経験上、事実として(前置き長いが)このヘルニア、事故由来かどうかなあ、という議論が出る段階で、事故由来と認定されることは、ほぼないです。ICUに骨折で入院していて、麻痺していて、これは事故由来→「当たり前やろー」というときは勿論外傷性ヘルニアとなりますが、めったにあるもんではありません。これを正しいかどうか、申し上げているわけではなく、日本の標準がこのくらいだという事です。
ちなみに、頚部の脊柱管狭窄やOPLL、腰椎の狭窄、辷りが元々ある人に脊髄、馬尾神経根症状が事故後に出た場合、事故との因果関係が医学的に認められるためには、事故前後の症状、診察所見、画像所見、事故の程度などを総合して「検討する」必要があります。まあ、現実として、事故との因果関係を医学的に認めることが、かなり難しくなります。患者さん側には厳しいところです。財政的な問題なんでしょうが、厳しいです。本当に事故で得をする人はいません。