- 4月 19, 2025
- 4月 21, 2025
骨粗しょう症治療薬による顎骨壊死について
2025年4月19日 土曜日16時です。先日外来で「歯を抜くけどいいよね?」→「骨粗鬆症の治療はそのままでいい、というのが一般的です」と説明しました。我ながら正しいけどいまいちだなあ、と。実は骨粗しょう症治療薬による顎骨壊死の警鐘は聞いたことありますが、実際の患者さんは見たことも聞いたこともありません。
骨粗鬆症→せぼね、大腿骨などが骨折→健康寿命が減り、死亡率も上がる
治療薬のビスホスホネート(B:商品名 ボノテオ)、デノスマブ(D:商品名 プラリア)投与で顎骨壊死が増加する。ここまでは一般的。
「骨粗しょう症治療薬(B,D)による顎骨壊死」に対して2023年に関連学会の共同声明が出されました。これを解読し、少し私なりにわかりやすい、使いやすいようにしたものが以下です。
薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023
1.頻度は1000人か1万人に1人と非常に少ない。一般人の顎骨壊死は0.0004%
2.機序はリモデリング障害(古い骨が残るから)、細菌感染、血管新生障害
3.診断:B,D使用歴があって、かつ8週間以上口腔内、顎、顔面に骨露出がある。(露出がなくても潜在性の壊死もある。この場合、歯周病などと区別がつかない)(図1、図2)


4.リスクは抗がん剤、ステロイド、免疫抑制剤使用、糖尿病、自己免疫疾患、透析、骨系統疾患、貧血、喫煙、飲酒、肥満
5.局所リスクは顎骨の感染>抜歯(以前は抜歯>顎骨の感染だった。感染が重要!)
6.感染=歯周病やインプラント周囲炎など
7.骨粗鬆症治療開始前に抜歯やインプラントは終えたほうが良い。
8.抜歯に際して原則としてB,Dの中止は不要。休薬で骨粗鬆症が急激に悪化するので。
9.休薬のために抜歯が延期される、歯性・顎骨感染が進行する懸念がある
10.月1回内服のボノテオ(B)は休薬の必要なし。(そうはいっても、おそらく月1なら飲んで1か月後に抜歯は問題ないはず。抜歯の2週間か1か月後に組織が修復されれば再開するか)
11.推奨として、半年に1回注射のプラリア(D)は投与後、4か月で抜歯を行い、再開は抜歯の2か月後として、大体前回投与の7か月後が望ましい。(図3)

12.2016年の共同声明では「難治性」を強調。2023年度版は「治癒可能」となった(口腔外科も進歩しているのでしょう)。
13.保存的治療は口腔内保清、洗浄、抗菌剤投与。感染がある場合には積極的に外科手術
頻度がかなり低いという事がわかりました。口腔内を清潔に保つようにアドバイスすることは間違いなさそうです。ちなみにほかの骨粗鬆症薬:ロモソズマブ(イベニティ)はほぼゼロだそうです。テリボン、オスタバロ、エビスタ、もちろん関係ありません。
骨粗鬆症改善には薬物治療と並行して運動療法もお勧めしています。30分程度の散歩が難しければかかと落とし(図4)。50回のかかと落としなら、せいぜい1~2分でできます。

淡海せぼねクリニックでは骨粗鬆症性圧迫骨折に対するセメントBKP手術を行っています。全員日帰りでとても術後経過は良好です。今週は8例のFESS手術、1例のBKP
手術がありました。全員日帰り、保険手術です。腰椎椎間関節症に対するリゾトミー、椎間板ヘルニアに対するレーザー治療も行っています。CGRP関連抗体薬投与を中心とした頭痛患者さんの治療もどんどん増えています。4月から看護師スタッフが2名増えてくれました。そんなこんなで、来週もよろしくお願いしますね。