- 11月 25, 2025
専門医とは
前回のコラムの続きで、整形外科、脳神経内科専門医の力をお示ししました。
「じゃあお前は何が専門や」という声に対する答え。
私は日本脊髄外科学会認定医、指導医、そして脊髄内視鏡下手術技術認定医です。そしてもちろん脳神経外科専門医です。脳神経外科専門医は医師として6年の経験があって、さらに試験を受けて毎年合格率6-7割、つまり3-4割は落ちています。調べると最近も同じ割合でした。一次試験のpaperで落ちるのも恥ずかしいですが、2次の口頭試問で落とされると「あんた臨床なにやっとたん?」となり、先輩たちが恥ずかしい。
最近来られた3人の脳MRIをお示しします。
A. 50代女性 頭部違和感
B. 50代男性 左頭痛
C. 40代男性 回転性めまい後に4日間続く頭痛

- 脳動脈瘤です。破裂するとくも膜下出血になるのですが、最近、くも膜下出血ってあんまりみませんよね。若い子は知りません。星野源さんは脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血でした。復活されたので本当に良かったですが、破裂して彼の様な経過は、なんと1/3。とにかく破裂したら合併症退院1/3、不幸な転機1/3。きちんと破裂前に治療すれば合併症率は数%。脳ドックで分ります。

- 海綿状脈動部硬膜動静脈瘻 脳の中の静脈は目や脳につながっています。そこに動脈がつながったら脳圧、眼圧などが高まります。動脈圧、いわゆる血圧は100以上、静脈は10位ですから。頭痛にもなるし、目もおかしくなる。動脈はMRIで写るけど、その撮り方では普通、静脈は写りません。左だけ静脈が写って、かつ左の頭痛、目はとび出ていなかったけれど。これもピンときます。医療センターで血管内治療を何回かに分けてしていただきました。

- 椎骨脳底動脈解離 2013年に千鳥のノブが「頭痛い」が続くので病院に行ったら入院となりました。脳の動脈は3層構造になっていて、層のはがれ方によって内腔が詰まれば脳梗塞、そして外に破れる場合はくも膜下出血になります。膜がはがれても頭痛、頚部痛のみの場合もあります。ジャニー喜多川さんは解離によるくも膜下出血でした。今回の患者さんはめまいに続いて後頭部頭痛が続く、というのでピンときました。「解離だ」と。MRIもそれ用に撮影してもらいました。医療センターに紹介してすぐ入院になりました。図1で他の方と比較するとわかりますが、真ん中下の方の血管が写っていません。つまり、両方の椎骨動脈がほとんど詰まっているように見えます。脳幹に行く血流が完全に止まって脳幹梗塞でもおかしくない状況です。なぜか脳梗塞ができずにぴんぴんしていました。詰まりそうで詰まらないと血栓が飛びます、脳梗塞。完全に詰まっていて他から血流が回ってくると、今回みたいに歩いてこれます。実はゲキゲキヤバ頭痛でした。

整形、脳神経内科の先生も併せて、専門医って何かなあと思いました。エビデンスをガイドライン読んで頭に入れることは最低限。そこにカンファレンスや、マンツーマン指導してくれた先輩の経験談が加わります。そして何よりも自分が責任取らなきゃいけない切羽詰まった状況での経験が加わります。いろんな患者さんの内科的治療は勿論、開頭術、血管内治療の様子もありありと思い出します。A,B,Cさんの治療においてほとんどストレスとかプレッシャーとかは感じません。ほぼ完全に正しいとわかっていることを優しく余裕をもって淡々と行うだけ。
さて、連休も旅行先でもなぜかコラムばかり書いていますが、今日からまたガチンコで手術です。専門医であっても待ったなしです。頑張らねば。