- 11月 12, 2025
圧迫骨折の治療法 BKPセメント手術後の続発性骨折について
良い予後のためには、BKPは1か月以内にしたい!
先日のコラムで腰痛を重症、その次、ゆっくり診断の3つに分けました。
私は腰痛をこう診ている 「急ぐか、MRI要るか」 | 淡海せぼねクリニックブログ
その重症腰痛に入る「圧迫骨折」。痛み+圧壊進行→下肢麻痺、腰痛の悪化が問題です。
治療は骨折ですから保存的に安静→骨癒合を狙うのが基本ですが、完全な局所安静のために金属固定術もあり得ます。そしてその中間にある、良いとこ取りなのが当院で施行しているBKPセメント手術です。
BKPの
- 良いところ:3mm切開、日帰り、低侵襲、早期に除痛+圧壊を予防
- 悪いところ:隣接椎体骨折(BKPした隣の骨の骨折)、セメント漏れ(有症状は稀)
圧迫骨折患者さんに対してBKPセメント手術低侵襲だし、早く痛みが取れるし、つぶれるのを防げるし良い事ばっかりでマイナスは手術を受ける時間と手間くらい、と説明していいのか、隣接骨折するのでできるだけやめとけ、というべきか。
最近、隣接椎体骨折症例を経験しましたので、無駄にしないためにも最新の文献をまとめます。
- まず一つ目は2022年のJBJSです。→ JBJS
PearlDiverデータベースを使用。固定術例を除外した。2015年から2019年までに(骨粗鬆性)圧迫骨折と診断された合計36,145人の患者の分析。71.7%が手術なし、28.3%が椎体形成手術(大半がBKP)を受けた。手術なし群の二次骨折率は21.8%、手術群は20%以下であり、有意差はない、手術したほうがむしろ二次骨折率は低い。
- Balloon Kyphoplasty後隣接椎体骨折の臨床的意義とその予測 – 文献詳細 – Ceek.jp Altmetrics 本邦の報告。大阪公立大の高橋先生。
109例にBKP施行され、29%で隣接椎体骨折を認めたが、骨折した隣接椎体への再BKPを要したのはわずかに1例のみ。

つぶれた椎体を無理に膨らませて頑張ってセメント入れて、直後には良くても上下の隣接椎体がその分へこんでしまう。隣接椎が骨折して全体には配列は改善しない事が多い。


どうすればよいのか
こういうことがまれにあるという事をしっかりと説明すること、そして行うならBKPを早く行うのが重要なのです。骨折受傷4週間以内にBKPを行った方が、4週間以降に行うよりも有意に隣接骨折が少なかったという報告があります。つぶれてから無理に膨らますのはダメ、つぶれる前にその高さを自然に保つのが良い、という事。セメントを入れるだけ、と思われますが、その背景を含めて非常に深い手術なのです。
淡海せぼねクリニックでは骨粗鬆症性圧迫骨折に対して、骨粗鬆症の治療に追加して、BKP手術を日帰りで行っています。患者さんの状態によって
- 日帰りでBKPを行う
- 手術なしで経過観察
- 不安定性が強くて固定術が必要な場合は総合病院に紹介する
- 痛くて日帰りなんて言っている場合ではない患者さんは医療センターに緊急で紹介
という感じです。患者さんの状態に応じてベストを考え、提案させていただきます。
とにかく圧迫骨折は最重症の腰痛ですから、疑わしい場合はMRIで早期に診断をします。