- 7月 14, 2025
神経根ブロック、古くて新しい診断と治療手技、そして愛なんです
2025年7月13日 夕方 1本書き上げた後です。
コラムは振り絞って書くのではなく、あふれちゃう感じで書いています。
まだまだ書きたいことあるんですね。
読んでいただいてありがとうございます。
神経ブロック、特に神経根ブロックは、淡海せぼねクリニックでは2階の手術室にあるレントゲン透視装置を用いて、正確に脊髄神経根に針を穿刺して造影、そして麻酔薬を注入します。
MRIでここが悪いかも、と思っても万が一違う場合もある。そこで、神経根ブロックを行って、いつもの疼痛が誘発される、または麻酔薬で痛みが軽減する、という事によって痛みの原因神経根を確定します。
もちろん、痛みが改善してオペにならない患者さんもいますが、そういう方は比較的、罹病期間が短い患者さんです。
つまりベッドサイドで行う仙骨硬膜外ブロックのみでも改善することが多いので、なんでも神経根ブロックをするわけではありません。



2006年ごろ私は、三重県で脊髄外科指導訓練施設に勤務していました。
学会が認定した、しっかりした脊髄の病院だったわけです。
Drは4人、オペ数は年間170例くらいだったと思います。
その施設ではっきりと診断できない、神経根ブロックが必要だ、となった時に、なんと院内の整形外科の若手にブロックを頼んでいたのです。
当時の脳神経外科では、一部を除いて神経根ブロックという文化がなかったのです。そんなもんだと思っていました。
その後、ほかの病院に転勤しました。そこで少し診断の難しい腰椎外側型ヘルニアの患者さんがいました。
当時、そういう症例では例の脊髄外科指導訓練施設の指導医の先生を呼ぶことになっていました。
ただ、私はL3なのか、L4なのか診断できていないのにオペのみ決まっているって、どう?と思いました。
神経根ブロックをすべき、と上申したところ、上司には断られました。理由は今はとてもよく理解できます。
来られる先生に「ブロックで良くなっちゃいました、キャンセルで」とは言えません。
私はとても悔しく、「ローカルエリアで偏った治療をしているのに、なぜか指導訓練施設って、胸張って言えるの? 自信満々?? 私は日本の標準治療を学ぼう」と思いました。
この症例はちょうど以前にここで書いたベンさんの症例と同じです(神経根ブロックが有効だった腰椎椎間板ヘルニアのベンさん | 淡海せぼねクリニックブログ)。
ちなみにベンさんはブロックだけしてオペになりませんでした。
めでたし。
さて戻ります。
上司とけんかしても仕方がないし、上司も一生懸命だし。
さりげなく自分が成長して三重県にもって帰ってくるしかないと思いました。そこで、当時の教授に国内留学を嘆願したところ、拒否。
「こんなに向学心があるのにー!」まあ、地域医療が切迫した医師不足だったから仕方がないのですが。
その後、藤枝平成記念病院脊髄脊椎センターで満足に勉強させていただいたことは以前に書きました(日本脊髄外科学会指導医更新、脊髄内視鏡下手術技術認定医承認までの色々な事 | 淡海せぼねクリニックブログ)。
藤枝から2012年に三重大学に戻りました。
大学は看護師さんが少ないので自分で車いすに患者を乗せて8階から2階の放射線透視室にお連れし、技師さんと二人でブロックをしていました。
神経根ブロックをやりまくって、診断しまくって、治しまくって、そして後輩・学生にも教えまくりました。
2014年には腰椎椎間孔部病変に対する神経根ブロックの効果として多くの発表を行いました。このころは意気揚々というか、「神経根ブロックを伝えるぞ!」という気合いに満ちていました。

今の淡海せぼねクリニックだったらどうでしょうか。
上記のベンさんのように、足が痛い、外来予約して、受診。
ほぼその日にMRI撮影して、看護師さんにアイコンタクトで予定が大丈夫そうならすぐに神経根ブロックをして、改善すればよし、改善しなくてもすぐに次の方針が立てられます。
そして、場合によってはすぐにオペの予定を立てて、数日後に8mm内視鏡で日帰り手術、デスクワークなら翌日復帰です。
結構、この姿勢は珍しい。
ハードルがあるから越えようとする、拒否されるから工夫する、困難があるから頑張れる。
神経根ブロックは、たかが一つの診断治療手技ですが、思い入れがあるのですよ。
もう一つ、今気づいた心がけるべきこと。
私は本日現在52歳です。今度は自分が古くなってはいけません。
学会などで新たな情報があればどんどんゲットしていかないとすぐにカビが生えて、古い淡海のクソじじいになりかねません。
すべては患者さんを良くしたいという自分の仕事への愛がエネルギー源です。
自転車と同じで倒れないように全力で行きます。