• 4月 7, 2025

腰椎分離症:新たなプロトコール

腰痛に悩む青少年のために、MRIを備えた脊椎専門クリニックの使命

2025年4月6日 日曜日 
書き終わった時点で14時です

3週間近く空きました。書きたいことはいっぱいあるんです。このコラムは外来で私が感じたこと、患者さんにゆっくりと伝えたいことをまとめる場所です。ここ数日、なかなか月末・月初めのレセプト期間と重なって睡眠時間の確保が難しく、書けませんでした。

ちなみに日常は

月曜日 4例手術

火曜日 外来→明日のオペの検討再確認

水曜日 私は2から3例、頚椎症性脊髄症などややヘビーなオペ

木曜日 外来、術前説明、術後のケア、紹介状の作成返事など

金曜日 外来

土曜日 外来15時くらいに終了

そしてやっと日曜日にはこのPCに帰ってこられるのです。
はい、まあ、言い訳です

若年者の腰痛についてよくご相談を頂きます。特に接骨院の先生から。数週間続く子供の腰痛は分離症を疑え、というのは信頼度の高い事実だと思います。当院ではCTとMRIを組み合わせて徳島大学整形外科の報告に従って硬性コルセット装着にて骨癒合を目指します。(図1)しかし問題はあります。

運動はさせたい↔確実に骨癒合させたい

プロトコールに従っても100%癒合するとは言えない→骨癒合しなかったときの対応

運動中止を勧めたときの患者、両親の悲しそうな目(←いや、骨癒合を目指せる良い状態という事がわかったのですよ! とは伝えていますが)

3か月後に当然癒合していると思ってCTとって骨折線が広がっていた時の落胆(図2)

親御さんの中には「引っ付くっていっとったやないか!」と怒る人もいます。

手術で治すわけではない、経過を診るだけ。そしてこんなにemotionalな作業は正直少し辛いですが、患者さんはもっとつらい。私が悪いのかもしれませんが、病気が一番悪いんです。厳密には遺伝子と運動のやりすぎです。

そうはいっても腰痛に悩む少年少女が分離症かどうかを確実に診断し、そして骨癒合の判断をして運動を許可する、これはCT・MRIなどの高度な医療機器を備えた脊椎専門クリニックの重要な任務です。

CT、MRIを頻回に撮ればいろいろ確実に骨癒合はわかると思いますが、必要以上の画像検査は必ず査定されます(不必要だとして国から当院に検査費用がいただけない)。まあそれは良いとしてもCTに関しては被曝の問題もあります。そこで、分離症疑いの患者さんに対する当院のプロトコールをここで決めようと思います。人によって細かく変える必要のないものを作ります。ただし、このプロトコールには「絶対に守らないとダメ」ではありません。それは「守れば絶対に骨が引っ付く」わけではないからです。プロトコールを破る場合も守る場合もすべて自己責任でお願いします。骨折は必ず治るとは限らないので、そう言わざるを得ないのです。

そして、以前から思っていたのですが、分離の診断プロトコールに本当にCTが必要なのかどうか。というのはCTで少し分離が怪しかったけどMRIでは高信号がない患者さんが最近みえました(図3)。

分離症病期のどこに入れていいのかわからないので、一応、硬性コルセットを勧めたところ、父上が拒否。再診予約なし。約2か月以上経過して本人と父上が受診。コルセットなし、安静にて痛みはない、と。「痛くないなら分離の悪化を認める可能性がないので(被曝の問題もあるし、もともと骨折線がはっきりしなかった)CTはやめたほうが良い、レントゲンは良い」、とお話したらレントゲンはまた拒否。帰宅後本人の母上から激怒の電話「ふつうはCT撮るんじゃないですか? 接骨院の先生もそう言っています。」分離の診断と治療はそんな簡単ではありません。接骨院の先生とお母さまで単純に「ふつう」と言えるようなものはない。いろいろ説明しようとしたら「もう行かんからいいです」とのこと。

CTは骨折線が見えてわかりやすいですが、骨折が治りかかっているのか、今から折れ行く状態なのかはわかりません。そして骨折線がほとんどなくても、MRIで椎弓根高信号の骨浮腫の状態、という事がありうるのです。また、CTの縦断面(矢状断)はなぜか絶対に骨折線のない人でも骨折に見えてくることは結構あるんです。水平断面で細かく切った情報の再構成ですから。

そんなこんなで以下に2025年4月6日時点での当院の若年者腰痛症(分離症疑い)のプロトコールをお示しします。本プロトコールは骨癒合を約束するものではなく、以前のコラムでも示した徳島大学整形外科の報告に則った保存的治療をお勧めするものです。
私、当クリニック独自のものです。

腰痛で受診。
当日、または予約状況によっては後日レントゲンとMRI撮影(分離、ヘルニアの診断)。徳島大学の報告に基づいて治療を行うことを説明。癒合率もお示しする。

MRIで腰椎椎弓根の高信号がある(これから骨折する、または悪化する)

硬性コルセット+安静3か月をお勧めする

硬性コルセット装着後3か月経過してからMRIで椎弓根高信号を確認する。高信号があれば骨癒合中の可能性があるので運動をお勧めしない、高信号がなければ運動開始をお勧めする。

MRIで椎弓根に高信号がない(これから折れる骨折がない)

または

レントゲンで骨折が判明する(既に骨折が完成している)

運動は疼痛次第で行う、次の画像検査は不要

このプロトコールにはCTを入れていません。判断基準からあえて外している、という事です。適宜改定するかもしれませんが、本日の時点ではこうしようと思います。

淡海せぼねクリニックでは腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、頚椎症性脊髄症、頚椎椎間板ヘルニア、胸椎腰椎の圧迫骨折に対して低侵襲脊椎手術、日帰り内視鏡手術、BKPセメント手術を行っています。

1月33例、2月35例、3月も35例の低侵襲脊椎手術、日帰り内視鏡手術、BKPセメント手術がありました。

すべて健康保険適用可能で、その結果、手術費用はほとんどの方が1万8千円、次いで8万円台の方が多いです。ほんの一部の高額所得者は10万円以上のこともあります。

国民の健康寿命を延ばすには治せる脊椎疾患が手遅れになる前に見つけ、良い治療・手術を提供しなければなりません。子供の腰痛、分離症にも早急に正確な診断と情報提供をしなくてはなりません。今後とも応援よろしくお願いします。

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