• 3月 16, 2025
  • 3月 25, 2025

アカシジア(Akathisia): 静座不能症

2025年3月16日 日曜日 AM9:57

おはようございます。患者のSさんのお話です。先日、1年半続けた痛み止めの弱オピオイド(最終的にはツートラム1日300㎎)を自己判断でいきなり中止したところ、約50時間後に突如として息苦しさ、じっとしていられなくなる、発狂しそう、家の中を意味もなくさまよい歩き、寝転ぶ、いつもはしない行動をする症状を認めました。内服中止によるものと自分で判断し、ツートラム100㎎内服して3時間後にやっと落ち着いたそうです。ご本人が今回の症状を分析して「アカシジアではないですか?」と伝えてくれました。私はツートラムを飲んでいた→おそらく吐き気止めのプリンペランも飲んでいたか?→アカシジアでいいかも、と思ってとっさに「そう、アカシジア」と言ってしまいました。しかし、調べてみると、その患者さんはプリンペランは飲んでいませんでした。

ツートラムの添付文書には

長期使用時に、耐性、精神的依存及び身体的依存が生じることがある。本剤の中止又は減量時において、激越(感情が高ぶって,言葉や行動が非常に激しいこと)、不安、神経過敏、不眠症、運動過多、振戦、胃腸症状、パニック発作、幻覚、錯感覚、耳鳴等の退薬症候が生じることがある。

とあります。結果的には弱オピオイド製剤の離脱症状です。今後は様子を見て、痛みに効いている・効いていないにかかわらず徐々に減量していこうと思います。

そんなきっかけですが、今日はSさんが指摘したアカシジアについてまとめます。大事です。ギリシア語が語源で「静座不能症」。

  • 病態:特に精神科のお薬の副作用で起こる。イライラ・そわそわして落ち着かず、動き回りたい衝動で座っていられない。悪化すると自殺企図も。
  • 機序:脳内のドパミン遮断作用が原因(関連してセロトニン・ノルアドレナリン・GABAなどとの関連も言われている)。また血清鉄の低下、糖尿病、脳炎、パーキンソン病との関連も。
  • 急性(薬剤投与後6週間以内)、遅発性(3か月以降)、離脱性(3か月投与されて、中断後6週間で発症)、3か月以上続く慢性がある。急性が最も多い。(という事は下記薬剤を始めるといつ何が起こってもおかしくない??)
  • 原因薬剤:(私が使う可能性のあるもののみです。詳しくは厚生労働省の『重篤副作用疾患別対応マニュアル(アカシジア)』を参照してください。)
○抗精神病薬:種類にかかわらず(ほぼ使いませんが)
○抗うつ薬 :三環系(トリプタ)、SSRI、SNRI(サインバルタ)
○抗けいれん薬:バルプロ酸 (デパケン)
○抗不安薬:アルプラゾラム
○抗認知症薬:アリセプト
○胃潰瘍用薬:ファモチジン(ガスター)
○吐き気止め:とにかくすべて!(ツートラム、トラムセットに併用)
○麻酔で使う:フェンタニル、オンダンセトロン
  • 対策:原則、原因薬剤の減量、変更。急性に対してはパーキンソン病の治療薬である中枢性抗コリン剤(アーテン、アキネトン)、ベンゾジアゼピン(セルシン)、βブロッカー(インデラル)の投与。遅発性に対しては抗コリンが無効。

鑑別として

  • 脚ムズムズ症候群:寝ようとするときに脚にムズムズした感じが出て、脚を動かしたくなる、ビ・シフロールというドーパミン作動薬が効く。アカシジアは基本的に薬剤によるものが多く、眠気と関係ない。ドーパ作動薬ではなく、抗コリンやβ遮断が効くところも違う。
  • 周期性四肢運動障害:寝ているときに四肢がめちゃくちゃ勝手に動く、日中眠い。寝ているときだから当然アカシジアとは違う。

ツートラムにトラムセットにプリンペラン、ドンペリドンの組み合わせ:山ほど出しています。本病態を知って、患者さんにもしっかりと伝えることが必要と思いました。Sさん、ありがとう。

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