- 3月 12, 2025
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聞きたくないでしょ、でも無視できない! 内視鏡手術の術後血腫!!
2025年3月12日水曜日 AM7:52
コラム更新が前回からなんと2週間も空いてしまいました。このコラムは外来で患者さんにゆっくり話したいことをまとめる場所です。コラムを書く時ってかなり体力的にも精神的にも余裕がないと難しい、すみません。今日は書きたいことが3~4個たまっていますのでどんどん行きます。
内視鏡下脊椎手術の影の部分、合併症について書きます。光の部分はどんどん出しますが、自分の性格上、影の部分を隠して「イエーイ」ってなんかむなしい。手術の説明書にはいろいろな合併症が書いてあります。その中で代表的なものに術後血腫、というものがあります。
手術でできた空間に多かれ少なかれ血で満たされます。ずーっと空間というわけではありません。血が神経を圧迫して症状を出すか、神経に触れて炎症を起こすか、それとも何の症状も出さないか。血腫量が多くても症状がなければ、または急性期を乗り越えられそうであれば乗り切って吸収されることを期待します。
血腫量が多く、局所痛も強く、筋力低下も来すようならば血腫を取り除かねばなりません。ちなみに血腫は必ず吸収されます。若手のころはMRIを術直後に撮ると先輩に怒られました。「血腫がなくなる3か月後ごろに撮れ」と。
術後の血腫ってどこにたまるのか?

図1 左図のように脊椎の後ろに硬膜があり、くも膜で包まれた空間(くも膜下腔)の中は髄液で満たされ、その中に脊髄や馬尾神経があります。術後の血腫は通常、硬膜外、つまり硬膜の外から押す血腫です。血腫は硬膜を圧迫すると局所の痛みを来し、さらに圧迫すると神経症状をもたらします。ただ、強い圧迫でなくても、多少の痛み、しびれは起こりうるので、血腫があるかどうかの鑑別はMRIがなければ簡単ではありません。術後血腫は硬膜の外に発生します。硬膜の内側に血腫ができる場合と比べて回復は明らかに良いです。硬膜、くも膜、髄液が神経を守ってくれるからです。
術後血腫の頻度と当クリニックの場合(2024年)

論文上で報告されている(追加手術を要した)術後血腫は通常の切開手術で0.6%(0.5-0.7)、MED法で1.2%、FESS法では0.8%(0.1-1.6)です。昨年、当クリニックで脊椎手術をされた患者さんは329例、その中で術後出血によって血腫除去術を必要とした患者さんは2名みえます(0.6%)。一人は頚椎、もう一人は腰椎です。血腫除去後に二人とも歩行可能になっています。(図2に頚椎の患者さんの術前・術後・血腫貯留・血腫除去後のMRを示します。)ただ、遠方の方は地元の病院にご紹介して、いったん入院していただきました。最終的にお二人とも元気に回復されました。
この二人の患者さんの後、対策として血抜きの管(ドレーン)の抜去基準を厳しくして、排出量が30グラム/24時間を下回るまで抜かない、としました。それ以後、血腫で手術した患者さんはいませんでした。
他の病院のように術後に多少血腫で局所痛があっても、入院し、近くに医師がいれば患者さんは安心できます。いつでも血腫除去できる状態で点滴やリハビリができれば頑張れます。ところが当院の特性として許可病床がありませんので、(症状のある)血腫が発生したときに経過観察入院ができないのです。
当院は血腫に不利である、と言いたいだけならこんなコラムは書きません。誰もそんなクリニックに来たくなりませんよね。なぜ書いたのか、というと
- 血腫はドレーン対策で減らすことはできるが、一定の確率でありうるので(Drは当然ですが、)患者さんも心して手術に挑むべし。
- ただ、神経を包む厚い膜の外にできる血腫なので、除去後の回復は悪くない、ねばれば自然吸収も十分に望むことができる
- 当院の血腫率は入院病床がない、ねばることができないことを勘案するととても低い
本日も合計4例の内視鏡脊椎手術、1例のBKP手術があります。すべて保険、日帰りです。ふんどし締めなおして頑張りたいと思います。