• 1月 20, 2025

腰部脊柱管狭窄症・ヘルニアの自然経過と私の手術適応

患者さんが医師から自分の病態と治療方針を聞くときに、ある程度、病気に対する基礎知識があったほうがスムーズです。脊椎の病気の基礎、そして長期予後、どういう人は手術が望ましいか、などの情報は非常に重要ですし、いつも外来で繰り返して説明しています。その一部をここに記し、理解を深めていただけると幸いです。

今回は腰の代表的疾患2つ

1.腰部脊柱管狭窄症

ヒトは20歳以前から椎間板が変性し、それが後ろに二つある椎間関節や黄色靱帯などへ影響します。通常は神経の通っていない椎間板周辺に神経終末が侵入し(椎間板自体の痛み)、神経根、馬尾神経が圧迫され(狭窄やヘルニア)、症状を来します。側弯や後弯、辷りの状態(脊柱変形)で最終的にはせぼね同士は骨棘などで癒合して安定化しますが、神経の居場所は狭まります。骨は神経のことは考えず、ひたすら骨の安定化を目指すのです。

図1はKirkaldy-Willisの脊椎変性カスケードというもので、椎間板の加齢→変形→骨棘で安定、でも神経圧迫、という流れをよく表しています。このカスケードは腰椎に限らず、頚椎でも同じことと思います。


図2はカスケードに従って狭窄症に進行していく流れがよくわかる例です。

腰部脊柱管狭窄症を手術なしで数年間、経過観察した報告を大体まとめると、
・神経根型(痛みしびれが片方)は半分以上が改善
・馬尾型(両側の臀部大腿下腿背面のしびれ)はほとんどが不変か悪化

つまり、片足症状なら、ある程度手術せずにねばる価値あり、両側の大腿の後ろなら改善はあきらめたほうがいいかも、という結果です。

私の手術適応は:上記のように数年間保存的加療をした患者さんは、おそらくそれでいいという事なので、こちらから特に手術は勧めません。リマプロストやプレガバリン、漢方は牛車腎気丸や当帰四逆加呉茱萸生姜湯などを用います。仙骨硬膜外ブロック、神経根ブロックなどもしまくりますが、椎間板ヘルニアに大体合わせて3か月以上はしません。ヘルニアは3か月を意識しますが、狭窄症は時期でなく、患者さんの困りかたで決めます。

痛みしびれで5分立っていられない、100m歩けない、下肢症状とともに排尿症状も進行しつつある、足首の動きが悪い、歩行が安定しない、なんだか腰から下全体が歩くとだるい、座ると楽、な人は手術を勧めます。下でも触れますが、問題は痛みしびれがないけど動きが悪い人です。こういう脊柱管狭窄症の人はこちらから強く手術を勧めなければいけません(図3)。遅れると麻痺が進行して排尿障害も完成します。

手術は神経根症状の症例は8mm内視鏡(FESS法)、馬尾症状で両側の除圧が必要な場合は10mmの内視鏡(DPELスコープ)を使います。わずか2mmの違いですが、骨削除のしやすさ、機械のパワーが全然違うんです。いずれも当クリニックでは日帰り、保険で治療可能です。

2.腰椎椎間板ヘルニア

まずは一般的な話です
痛み症状は発症2か月で60%程度は改善する。
筋力低下(MMT3、重力に何とか逆らえる)があれば1か月以内に手術したほうが改善が良い。尿閉などの重度の排尿症状があれば48時間以内の手術が望ましい。ヘルニアの縮小は半数で3か月ごろまでに起こる。症状の改善はヘルニアの縮小に先んじて見られる。脱出型(かなり飛び出してしまった)ヘルニアは吸収されやすい。結論として筋力低下や強い排尿障害がなければ3か月までは保存的治療を優先する。ただ、6か月以上の保存的治療は有意に症状の改善が悪い(SPORT 2011)。

私は足首の麻痺があれば基本的には手術を勧めます。足首は治りにくいです。膝や股関節が「かくっ」と折れてしまう麻痺は自然に治る可能性が残されていると感じていますので、それほど強く手術を勧めません。強い排尿症状、つまり明らかな尿閉や尿意の消失は緊急手術が必要です。頻尿や残尿感は痛みで膀胱が収縮、括約筋が弛緩しきらないためではないかと考えています(交感神経優位)。まあ、それでもそれほど痛いなら手術をすべきとは思います。脊柱管狭窄症では痛みしびれが少なくて麻痺が初発症状のために、こちらから強く手術を勧めなければいけない患者さんがいますが、ヘルニアの時はほとんど痛みを訴えてくれますので、それほど話は複雑にはなりません。(もちろん、以前に書いたようにヘルニアも大きなくくりでは脊柱管狭窄症の中に入ります)上記のヘルニア云々は靱帯の肥厚などが少ない、純粋なヘルニアの場合です。

私の手術適応は:明らかな改善がみられる患者さんは当然経過観察です。働き盛りの人は保存的加療よりはどちらかというと手術をお勧めします。仕事休んで、保存的治療3か月しても治るかもしれないけど、治らない可能性も十分にありますので。仕事をお持ちでない方はリハビリも含めてゆっくりと保存的加療をしていただきます。ヘルニアであれば下に垂れ下がろうが、上に突出していようが、椎間孔にはまり込もうが、すべて8mm内視鏡で日帰り手術にて治療ができます。当クリニックでは保険でやっていますので、心配はいりません。

2025年1月第3週の先週は(BKP手術も含めて)、なんと水曜日5件、金曜日4件の手術がありました。小さなクリニックですが、看護師も放射線科も理学療法士も事務のみんなも、そして外勤の先生も麻酔の先生も本当に頑張ってくれました。またよろしくお願いします。

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